高遮音性イヤホン

高遮音性イヤホン SHURE SE110

電車の中で使えるヘッドホン・イヤホンといえば、電気的に雑音を除去してくれるノイズキャンセリング型の製品もありますが、SHURE SE110 は耳栓の中に超小型スピーカーを組み込んだような製品です。最近この種のイヤホンがいくつか発売されているので、秋葉原の電気店で聞き比べしてみました。予算は15,000円くらいまでということで、ER-6i など良い製品がいろいろあって迷いましたが、遮音性第一でこの製品に決めました。音質の方は、店や電車の騒音の中で聞いた限りでは、地味だなーという印象でしたが、自宅に帰って聞いてみると、騒音で気付かなかった繊細な音がたくさんありました。確かに派手ではないですが、いろんな音が色付けされることなく丁寧に再現されます。今ではこれまで聞いて来たヘッドホン・イヤホンの中で一番好きな音です。以下に、この製品を使ってみた感想を書きます。


遮音性はスポンジ製の耳栓に近いです。

どの音域も強調感のない自然な音で、特に中低音域の立ち上がりが良いです。

高音域は控えめではあります。でもよく聞くと繊細な音だと思います。

環境音の再生時も臨場感があります。

耳栓と同様、最初は耳あたりに違和感があるかもしれません。

周囲の音が低減されるだけに、音量設定に注意(耳を大切に)!

入手から2年近く経ち、SE110 は過去の機種となってしまいました。その後発売された SHURE SE115 にも興味はありますが、SE110 が好きという点は少しも変わりません。このモデルに限らないと思いますが、良いヘッドホン/イヤホンは一度手に入れると、ホントに長く愛着をもって使えるみたいですね。あ、ただ上位機種の SHURE SE530 がずいぶん安くなった気がします。当時の価格は覚えてないですが、「とても買えないや」と思った記憶があります。私の覚え違いかもしれませんが、いま見て、ちょっと悩まされました(^^) 【追記 2010/08/06】

遮音性はスポンジ製の耳栓に近いです。

耳栓型のイヤホンは他にもいくつかあります。今回試したのは、Klipsch の CUSTOM-1 , Pionner の SE-CLX7 , HarmanKardon の HKEP720 , ETYMOTIC RESEARCH の ER-6i です。なお耳あてはいろいろな型が別売りされていることも多いですが、その製品の代表的な(と思われる)耳あてで試しました。


Klipsch の CUSTOM-1 は、店頭の札に遮音効果が数値表示されていました。たしか 26dB だったと思います。実際に装着してみるとそれまで使ってきた防音用イヤマフ(遮音効果 24dB)より少し遮音性が低い気がしました。


Pionner の SE-CLX7 は、相談した店員さんが「遮音性はこれが一番良いと思います」と勧めて下さいました。装着してみると、耳あてが耳栓のようにしっかり固定されず、遮音性が削がれている気がしました(スポンジ製耳栓は耳の中で膨らんで、耳の内壁にしっかり固定されます)。耳あてを指で耳に押しつけるとかなり周囲の音を消してくれたのですが。ただ店頭で自己流で装着してたので、本当は何か正しい使い方があるのかもしれません。


HarmanKardon の HKEP720 は、製品の箱に遮音効果が数値表示されていました。たしか 35dB だったと思います。実際に装着してみると、確かにこれは前記イヤマフと互角以上の素晴らしい遮音効果がありました。


ETYMOTIC RESEARCH の ER-6i は、選定時の本命機種でした。装着してみると遮音性は HKEP720 より僅かに少ない気がしました(耳の形で個人差があると思います)が、高音域がきれいだったので、ほぼこれに決めました。


SHURE の SE110 は、音が地味だと聞いてたので、あまり選ぶ気はなかったですが、まあついでにと試した結果、これを買うことになりました。個人差はあるでしょうが、私が聞いた限りでは、遮音性は ER-6i 等よりこちらの方が更に良いです。ER-6i や HKEP720 は耳あてがゴム製の3段フランジ型、SE110 のはスポンジ製ですが、その差じゃないかと思います。耳栓もゴム製のフランジ型とスポンジ製のがあって、スポンジ製の方が特に高音域を中心に、騒音を強く抑えてくれる製品が多いです。

帰りの電車でスポンジ製の耳栓と遮音性を比べてみました。耳栓は「ピップ イヤ〜ホリデイ」です。右耳に SE110 を、左耳に耳栓を装着してみました。やはり遮音性は耳栓の方が上です。SE110 を着けた側の耳には、周囲の音が少し多めに入ってきました。でもどれくらい多めかというと、冬の寒い日に暖房の効いた部屋にいて、扉の下の数mmの隙間から廊下の冷気が入ってくるような感じ・・・すみません、分かりにくいですね(^^; 直接耳栓と比較すると差はありますが、比べなければ、SE110 を「これは耳栓だ」と言って使うことも十分に可能だと思います。

どの音域も強調感のない自然な音で、特に中低音域の立ち上がりが良いです。

SE110 は特に中低音が良いです。重低音という感じではなく、自然で豊かな音です。そしてドラム・ベース・クラシックギターといった立ち上がりの早い音が淀みなく再現されます。古内東子さんの「Strength」やアルジャロウさんの「Spain」では、ドラムの各タイコから出てくる音やベースの音が、一瞬の風みたいな圧力で迫ってきます。

サーカスの「愛で殺したい」は、前田憲男さんの編曲で、後ろでトランペットやトロンボーンが活躍します。2本のトロンボーンのユニゾンで僅かな音程のズレから発生するコーラス効果がきれいに再現されます。

高音域は控えめではあります。でもよく聞くと繊細な音だと思います。

この製品で一番評価が分かれるのは高音域だと思います。高音域を強調しない暖かい音。人によっては曇った音だとも言うようです。果たしてこれは原音に忠実な音なのか、それとも高音域が本当に出足りないのか。店頭で 上位機種 SE530 を聞いてみたところ、SE110 よりシャキっとした音で、高音域の角がよく立っていると思いました。SE110 は多少高音域が控えめではあるのでしょう。お金があれば上位機種を選びたいのは事実です。でもそれじゃあ SE110 の高音域がダメかというと、そんなことはないと思います。

朝比奈隆指揮・NHK交響楽団の「ベートーヴェン・交響曲第9番」は、音質面でも誇張感なく素直に録音されていると思います。SE110 で聞くと、バイオリンの音が他の楽器に少し埋もれて聞こえます。漠然と聞いていると丸い音という印象です。でもバイオリンによく注意して聞いてみると、意外にさらさらっと高域まで伸びていて、サーッとかシーッとかいう倍音まできれいに含まれています。

多分、周囲の騒音が大きいとか、自分の集中度が低いとかで、微妙な音への注意力を十分払えないとき、この音はつまらなく聞こえがちなのではないかと思います。私はこの音にはまってる時点では心底「繊細な音だなー」と思います。

環境音の再生時も臨場感があります。

虫・蛙・蝉の声などの高い音の再現性は少し地味です。これまで使ってきた国産のイヤホンの方が高音域が強く出て、広い空間にいるような開放感がありました。でも実際の音よりかなり派手で、特に蝉の声などは耳に突き刺さるような音になりました。SE110 の方が実際の音にずっと近いと思います。


【冬缶9】で新幹線が走る音 は、これまでのイヤホンでよく聞こえなかった地鳴りのような音が、SE110 ではちゃんとします。現地では列車通過時に本当に、地面か空気から振動みたいなものが伝わってきて、ドドドドっていう、音というか「感じ」がします。もちろん SE110 では地面か空気からの振動は再現できませんが、それを思い出されてくれる程度の、立ち上がりの良い低音を含んだ音がします。あと遠くを走る車の音が柔らかく、聞いていると昼寝をしたいような気分になります(そんなの私だけかもしれませんね(^^;)。


【春缶12】の船の音 は、ファイル先頭から 3分05秒目あたりから目立ってくる船のエンジン音の再現が素晴らしいです。船体から直接届いてくる張りのある中音域と、辺りの空気全体が大きなエネルギーで振動しているような低音域。昔、瀬戸内海のばあちゃんの家で聞いてた沖の船の音と同じ音がします。

耳栓と同様、最初は耳あたりに違和感があるかもしれません。

私の場合ですが、初めて耳栓を使ったとき、それはスポンジ製でしたが、耳の内壁が痛くなって10分と使っていられませんでした。数日使ううちにその痛みはなくなって行きましたが、その後3段フランジ型の耳栓を使ってみたときも、同じような違和感がやはり2日ほどありました。

SE110 も装着感は耳栓そのものと言えます。初めてお使いになる方はもしかしたら最初は短時間しか使えないかもしれません。

なお、製品に最初から付いてくる「ソフト・フォーム・イヤーパッド」より、スポンジそのものという感じの「フォーム・イヤーパッド」の方が楽かもしれません。前者は耐摩耗性向上のためコーティングがされてるらしく、耳の内壁に貼り付く感じが強いので、場合によっては痛みの原因になる気がします。

周囲の音が低減されるだけに、音量設定に注意(耳を大切に)!

耳栓型のイヤホンだからといって、周囲の音が聞こえない程の音量で聞くのは、やはり耳に良くないと思います。

他社製の耳栓型イヤホンを店員さんに勧められたとき、「このイヤホンは遮音性が高く、周囲の音が全然聞こえません。」と言われました。でもそんなはずはありません。本物の耳栓を着けてても周囲の音は聞こえます。店頭で使って周囲の音が聞こえないのは、再生音量が大きすぎるからですね。

さて、どのくらいの音量で聞くかについては、耳栓型のイヤホンは通常のイヤホンよりいいかげんになりやすいと思います。周囲の音が聞こえにくく、音量設定の基準を把握しにくいからです。

試みに、静かな部屋で耳栓型イヤホンを着けてみましょう。周囲の音は何も聞こえません。そこで何か音楽をかけてみる。続いて音量を2分の1に下げて聞き続ける。ひどく小さい音に思えます。が、更に音量を4分の1に下げて聞き続けた後、2分の1に戻して聞くと、最初に2分の1にしたときより、かなり大きい音に感じられます。音量に対する感覚は相対的で、基準になる音がないと、有害な再生音量に達してもそれと気付きにくいのではないかと思います。なので、この種のイヤホンを使うときは特に、楽しめる範囲でなるべく小さい音で再生するよう、いつも心がけておかなければならないと思います。


余談ですが、大きすぎる音で聞くより、小さいめの音で聞いた方が、良い音に聞こえることはありませんでしょうか?

私は音楽バンドで演奏会に参加するとき、いつも「もっと小さい音でやればいいのになー」と思っています。管楽器や打楽器は生音主体で聞いてもらってもいいのではないかと。PAを使って大音量にしてしまうと、音色がよくわからなくなります。多分どこかの音域で、耳が処理できる音量を超えてしまってるんじゃないかと想像してます。

ディープパープルのハイウェイスターみたいなハードロックでも、音量を出来るだけ小さくしてやると、シンバルとか歌声とかで、大音量では分からなかった繊細な音に初めて気付いたりします。

(2008/11/05 作成)